英単語5000語の大量暗記から考える「脳」の使い方

記事の5行まとめ
  • 人間をコンピューターになぞらえると”脳”が「演算装置」、「記憶装置」の役割を同時に担っている。
  • 人間の「記憶」には「メモリ領域」と「ハードディスク領域」がある。
  • 「メモリ領域」は「演算」と「記憶」が常にリンクしており、その中の「記憶」は動的で激しく入れ替わる。
  • 「ハードディスク領域」は、人から問題を出されたら思い出して回答できるような”無意識的”な領域だが、容量が大きくて忘れにくい。
  • 英単語を5000語覚えられた人間は、記憶の専用領域を確保しており、専用領域を”意識的”に管理・運用することで「メモリ領域」から「ハードディスク領域」へ英単語情報が保存される。

小学校教育から高等学校教育にいたるまでは、先生が授業で説明した物事を覚えることが、そのまま勉強であったように思います。

中学校までは脳のそのままのボリュームでギリギリいけました。しかし高等学校ではそのボリュームを上回ります。

大学受験を経験した人は英単語を5000語前後覚えた経験があるのではないでしょうか。センター試験水準が5000語だからです。

高等学校の授業ではセンター試験水準である5000単語の全てを解説しなかったでしょう。残りは独学で調べて覚えなければいけませんでした。

大学受験を経験していない人は英単語を5000語覚えられる人間が不思議ではないでしょうか。

その違いとは、確かに努力の差はありますが、それだけでは収まらない要因があると思っています。
その要因について説明していきたいと思います。

この記事について
  • 執筆について最善の努力をしましたが、わかりづらいところがあります。
  • ここで使用している「脳のメモリ領域、ハードディスク領域」等の用語は何かに認可されている訳ではなく、あくまで個人的な用語です。
  • 以後、文量の関係で「だ・である調」で執筆します。

コンピューターを例に脳の役割を説明

まずはコンピューターを例に脳の役割を説明したい。

コンピューターには五大装置というものがある。

装置 PCパーツ 説明
制御装置 CPU 演算装置・記憶装置・入力装置・出力装置をコントロールする
演算装置 CPU データ処理に関するさまざまな演算を行う
記憶装置 メモリ、ハードディスク 入力されたデータやプログラムを記憶する
入力装置 キーボード、マウス データを外部から取り込む
出力装置 画面モニター データや処理の結果をコンピュータの外部環境に出力する

 

これを元にして人間をコンピューターになぞらえて考えてみる。

  • 「入力装置」は五感(視覚、聴覚、触覚、味覚、嗅覚)である。
  • 「出力装置」は口と手足で、「制御装置」は中枢神経。
  • 「演算装置」、「記憶装置」の役割は”脳”が同時に担っている。(ポイント)
    ※記憶は心臓が司っているという説もあるが、ここでは脳が司ることにさせて頂く。

人間の「脳」がコンピューターの構成要素で言うところの「CPU」「メモリ」「ハードディスク」を担っているということである。

 

ハードディスクととメモリの説明

 

料理を例に、CPUとメモリとハードディスクを説明すると、メモリとは「まな板」であり、ハードディスクとは「冷蔵庫」である。CPUは「料理人」にあたる。

大量の料理をするとき、

  • まず、食材を「まな板」にのせる。「まな板」が広ければ広いほど、同時に様々な食材を料理でき、スピードが速い。
  • 「まな板」にのせきれなかった食材は「冷蔵庫」に一旦閉まっておく。
  • 「まな板」の上から食材がかたづいたら、「冷蔵庫」から「まな板」の上に食材を出す。

このような関係である。「まな板」は料理人が食材を料理する場所で、「冷蔵庫」が食材を確保しておけるスペースである。

そしてまな板(メモリ)と冷蔵庫(ハードディスク)の関係を、人間の脳でも行っている。

本題であるが、英単語を5000語覚えている人というのは、実際には5000語を「明確に」覚えている訳ではない。

「明確に」の説明が難しいが、要は人間の脳内の「メモリ」領域(まな板)に全てを覚えていないということである。(「メモリ」領域については後述する。)

脳には「演算装置」、「記憶装置」があると説明した。
さらに「記憶装置」には「メモリ領域」と「ハードディスク領域」があるので、それぞれ用途に分けて使用するべきだというのが本題である。

別の用語で言い換えると、「メモリ領域」が短期記憶・ワーキングメモリ(作業記憶)で、「ハードディスク領域」が長期記憶である。

このことについて詳しく説明していく。

メモリ領域

脳の日常的な「演算」に使われている記憶領域を「メモリ領域」と呼ぶことにする。

​​脳は「演算装置」、「記憶装置」の役割を同時に担っていると説明した。
さらに脳には”意識的”な世界と”無意識的”な世界に分けられる。

”意識的​​”な世界は自発的に取捨選択できて戦略的な”計算”ができる世界だ。
”無意識”な世界は自発性がなく、環境によって影響されているところが大きい世界である。

”意識的”な世界では常に何かを”考え”ている。”考える”ことで外の何かと「手続き」をしている

“考える”とは「演算」のことで、「手続き」とは、情報のインプット・アウトプットのことである。脳はその中で必要情報の「記憶」を行う。または「記憶」からの引き出しを行う。

アウトプットとメモリ領域

人はおそらく日常生活において「アウトプット」の作業をメインにして記憶にアクセスしている。学校の勉強などの何か新しい勉強をする時だけ「インプット」がメインに切り替わるのだろう。

アウトプット」をするために、引き出すための記憶にアクセスしている。
それはコンピューターの「メモリ」と「CPU」の関係と同じであると思われる。

脳は膨大に考える、すなわち「演算」をしているのだが、その分母の数に対して、分子である「考えた結果」が将来本当に必要になる確率は低い。必要にならずに考えが「捨てられる・忘れられる」ことが多く、記憶するに値しないことの方が多い。

このように脳は”計算”しつつも、将来的に本当に必要である、いわば「報酬」というゴールに戦略的に”計算”できるデータであるかを考えている。ゴールに遠ければ“意識的”に覚えている必要がなくなって、外に追いやられ、意識から外れていく。

「メモリ領域」はそのように、動的で入れ替わりの激しい領域であると考える。

 

ハードディスク領域

“今の自分”が考えている「考え」はすぐ引き出し可能な「メモリ領域」の内容だと説明した。

それとは反対に、自分から”意識的”に引き出せない、人から問題を出されたら思い出して回答できるような”無意識的”な領域も、同様に「記憶」領域である。メモリ領域とは別に存在する。

ハードディスク領域」と呼んでいるものだが、実は人間の脳は”無意識的”な領域には結構スペースがある。

なぜなら、人が1日の流れで扱う情報量には限界があるが、1日を超えて見てみると1ヶ月、1年間で処理している情報量は想像を超える量である。そんなものをやりとり出来るほど脳はかしこい。そのような自分で”意識的に管理できない”領域に「ハードディスク領域」はある。

「ハードディスク領域」は長期記憶であり、覚えるとなかなか忘れることはない。「メモリ領域」とは違って容量が大きいのでデータの入れ替わりは激しくない。ただし容量が大きい分、意識的に引き出すことが難しいと考える。

では、この長期的なデータを取り扱う領域である「ハードディスク領域」と英単語5000語記憶の関係について説明する。

長期的な専用領域を確保する

英単語を5000語覚えられる人は生活の中に”大学受験空間”を確保しているだろう。日常生活となっている”現在”の世界の「手続き」とは分離させた空間を確保している。分離する方法は塾であったり、独自につくったり、親につくられたり、とにかく何らかの手段で別の空間を確保している。
(結局、日常生活に勉強する習慣を作っているから出来るという話になってしまうが。)

その空間を継続する中で、習慣の中の”大学受験空間”という専用領域に、過去、現在、未来のサイクルが生成される。→ 1年間のサイクルが形成され、脳が1年間レベルの情報量を受け入れる、脳のスペースを開ける状態になる。

専用領域を確保することで「覚えた」単語も「忘れた」単語も同じの箱の中に管理することができる。
(「過去」覚えていた単語も「現在」は忘れているかもしれない。「現在」覚えている単語も「未来」は忘れているかもしれない。
しかし、未来に渡って繰り返し勉強することが保障されている。)

“現在”の自分が英単語の「覚える」、「忘れる」を「メモリ領域」で繰り返し行っている。忘れたものは”無意識的”領域に放り出されるが、それをまた未来の自分が復習する。
すると同じ単語を2度、3度繰り返し復習していくうちに、脳はメモリ領域の数ある情報をさらに“意識的”に維持していく。すると脳は「短期記憶」から「長期記憶」へと格納する。たぶんこれが学習の最良の方法だろう。

大学受験レベルの空間を確保するには”現在”から何か外部との切り離しが必要だ。
切り離して確保された専用領域に「ハードディスク領域」が確保される。

私の例であるが、高校3年生の生活一年間を脳のスペースの領域を開けることに費やした。塾に通っていなかったので、6月から翌年3月までは受験以外のことをしないことで”現在”を遮断し、脳のスペースに一年間の領域を確保した。

夏休み中に「速読英単語(必修編)」を完了させ、1度「メモリ領域」に英単語5000語を放り込み、その後1ヶ月に1回、作成した単語帳から英単語2000語を復習することで、うまく5000語を忘れないように運用していた。それで英単語5000語が「ハードディスク領域」に記憶された。
ただし、たぶんこの運用方法は私立3科目が限界だろう。

 

長期的な「演算」について

「メモリ領域」で説明した内容が”現在”の中での「演算」だとすると、それとは別に”過去”から”未来”への「演算」がある。
この「演算」を意識してみる。
脳に開けたスペースを1日1日管理して運用する長期的な「演算」である。

数学の場合は「演算」中の「記憶」である。「演算」を優先し、要所のタイミングで「記憶」を行い、数字を進めていく。

今回言っているのは「記憶」する為の「演算」である。「記憶」に残すことを優先し、要所の場所で「演算」して「記憶」を運ぶ。
ここでの長期的な「演算」とは大量の情報を先へ運ぶための「手続き」を作ること、未来から現在へ至る通過ポイントを意識して、過去から未来へ大量の情報の為の道をつなげることである。
ハードディスクという膨大な情報量を”意識的”に管理・運用する計算をする。

中学校では先生が向こうから教えてくれた。情報が向こうから入ってくるので、教えてくれる内容だけ意識して覚えて”さえ”いれば良かった。
高等学校では(ボリュームが大きく、全内容を教えてもらえる訳ではないので(個人個人の岐路も違うし))自分から能動的に覚える内容・範囲を特定し、(ボリュームが大きいので)意識的に覚える内容を管理・運用していかなければならない。

自分の耳に入ってこない情報については無意識だった中学校から脱皮して、自分の耳に入ってこない、外の情報を自ら意識的に追わなければならない。

この訓練を行っているか、行っていないかで、今後大量データを扱う上では人生に大きな差が出ると個人的には思っている。

結局体力勝負だが必要なのは、日常生活でインプットする情報のほとんどが”無意識領域”を飛び交っているのに対し、意識的”に外の”無意識領域”から分離させて覚えた自分にとっての大量の必要情報を、要所要所で忘れていないかチェックし続けることだ。
そうすることで大量の必要情報を入れる為に確保した領域が崩されずに先へ運ばれる。(羊の囲い込みのように)

 

この長期的な「演算」を続けていると「記憶」をうまく後押しする。”現在”に焦点を合わせる事から抜け出し、未来へ焦点を合わせる事で通過ポイントから通過ポイントへ”流れ”ができる。すると次からは流れるプールのように後押ししてくれる。最初は無の状態だが、進めていけば時間の流れを未来から「演算」している自分が作られる。

流れが出来るまでは大変だが、一度流れが出来れば、流れが「記憶」を後押ししてくれる。
ハードディスクの領域で大事なのは記憶そのものではなく、記憶するスペースの管理・運用である。

 

最後に

このような英単語5000語という大容量を記憶するのは、私は人生で大学受験の時だけでした。
社会人になって仕事し始めたら、記憶することは極力せず、カンニングペーパー的なもの、外出しのハードディスク情報のものを用意しておいて、頭は「記憶」せず「演算」だけに集中しています。

私は大学受験で英単語を5000語覚えましたが、英会話ができるようにはなりませんでした。だが、コンピュータプログラマとして仕事をする時には、Googleから必要な情報を検索する時に英語のサイトばかり表示されるので役立っています。
日本の英語教育の是非は賛否両論あると思いますが、大容量の情報の扱い方の学習という点では良い経験になりました。

また、長期記憶 短期記憶 で検索すると先駆者の様々な情報があるので検索されると良いでしょう。